林業のイメージと現実
「林業」と聞いて、みなさんはどのようなイメージが湧きますか?
私はまだ林業を初めて3週間ほどのド素人みたいな者ですが、今回の記事では、私が以前に持っていた林業に対するイメージと、実際に経験して分かった現実についてお話していきたいと思います。
この記事は私が働く職場を参考にしていますので、林業に興味を持たれている方にとってどの程度役立つかはわかりませんが。。。
まずは、林業を始める前のイメージと、実際に始めた後で感じた現実についてお話していきます。これは、林業の会社に就職した一従業員目線でのお話なので、起業してご自身で林業をされる場合には、また事情が変わってくるかと思います。
私がイメージしていた林業 ⇔ 私が経験した現実
①都会の喧騒から離れ、自然に囲まれた仕事場
⇐ 基本的にイメージ通り
②体をフルに使って働くので健康的
⇐ これは完全にイメージ通り
③朝早くから働き、夕方には帰宅
⇐ 私の会社では8時出社、20時帰社が基本
④仕事上での面倒な人間関係が少ない
⇐ 一概には言えない
⑤雨の日は休み
⇐ 現場仕事はできないが、事務仕事をする可能性あり
⑥給料が安い
⇐ 私の初任給は手取りで13万円ほど
①に関しては、みなさんの想像通りです。山の中には仕事仲間以外に誰もいません。黙々と山仕事をこなし、たまに休憩したり、お昼ご飯を食べたりで、日が暮れる前に山から下ります。
私はまだ林業を始めてから3週間程度ですが、やはり山というのは清々しいです。
山といっても杉と桧の人工林なんですがね。ただ、耳を澄ませば小鳥のさえずりが聴こえますし、木々の樹冠からこぼれる陽光などはたまらなく美しいです。標高1000m近い山は初夏でもすこし肌寒かったりしますが。
②体全体を使う仕事なので非常に健康的だと言えるでしょう。山仕事では重機に乗ることも多いですが、やはり自分の足で歩き、自分の手で木を伐り、道具を運び、土を鍬で掘ったりすることがメインのように思います。少なくとも私の会社ではそうです。
仕事後は、心地よい疲労感がじんわり体に染みてきます。ビール好きなら間違いなく、ここで一杯。私はお酒自体好きではありませんが。
③私の会社の規定では8時出勤、17時帰社になっていますが、それはほとんど建前の話です。実際、朝現場に集合するのは8時で、現場仕事が終わるのは17時ですが、それから事務所にいったん戻ります。事務所では、先輩の仕事が終わるまでは帰れないです。このあたりがまさに日本的な社風とでも言いましょうか。
④私の会社は、昭和のなごりを強く残した社風で、上下関係は非常に厳しいです。ただこれは林業に限った話ではないでしょう。また、この業界はなぜかお酒好きの人が多い。お客さんとの付き合いではお酒が飲めたほうが間違いなく得だなと何度も感じています。ちなみに私の会社、社内での飲み会は週に1回は確実にあります。一昔前は週に4回、毎回深夜帰りだったそうですが。
⑤雨の日は事故が起きる可能性が高いので現場仕事は休みです。毎日、急な山道を車で登る仕事なので、雨の日は地面が滑って半端なく危ないです。パンパンに木を積み込んだ2tトラックで、びっくりするくらい狭くて急な山道を走ったりするわけですから、気を緩めると滑落します。実際に車で滑り落ちた先輩もいます。彼は運よく一命はとりとめましたが。。。
私の会社では雨の日でも、書類関係の仕事であれば事務所ですることもあります。
つまり、雨の日=休みとは単純にはならないということです。
⑥入社して最初の3か月間は試用期間で、給料は額面で16万円ほどです。なので、手取りに換算すると12、3万円になります。これは未経験なのである程度は仕方のないことですし、私自身もこのことを分かって入社しました。
とにかく今の時代、木材の値段がとても安いのです。先輩から聞いた話だと、20年前は2tトラック一杯で9万円ほどはお金になった杉の原木が、現在は3万円ほどにしかならないということですから相当安くなっているのでしょう。
住宅を建てる人の数も減っているので、どのようにして木材の付加価値を高めてくのか、あるいはどのように森林資源を経済的価値に変えていくのか、というのが喫緊の課題です。
木材が大きな利益にならないのに、なぜ会社を経営できているのかと言えば、それは国からの補助金があるからです(これに関しては別の記事で詳しく書こうと思っています)。ちなみに私の会社の売り上げの半分以上はこの補助金です。
最後に
日本の森林の4割が人工林なのです。これは非常に大きな数字だと思います。私たちのご先祖様が大変な思いをして作り上げてきた森が森林全体の4割もあるのです。
けれど、林業従事者の減少により、森林の担い手がどんどん減ってきています。つまり放置林が増加しているのです。先人が植えた木は余るほどあるのに、なぜこれが価値にならないのかが、とても不思議で、まあ需要がないと言ってしまえばそれまでですが、それをなんとかできないのか、と考えたのが私が林業の道に進もうとした一つの理由なわけです。
今日はこの辺で。