28歳からの林業

Iターンで地方へ移住し、未経験から林業の会社に就職。林業の実際を現場からお伝えしていきます。

林業って実際何するの?

 

 私が林業の会社に就職して3週間ほど経ちます。初めての業界で、右も左も分からず苦労の連続ですが。加えて、山での仕事は本当に体力勝負です。大地にしっかり足の着いた、原始的な労働が大半を占めます。接客業や営業をされている方は、ノルマやお客さんの対応で精神的な負荷がかかりやすいかと思いますが、山仕事は主に肉体面での負担が大きいと一般的に言えるでしょう。

 

 さて今回記事にしたいのは、林業の会社で働く私が、具体的にどのような業務を行っているのかということです。山の仕事は、ただ単にチェーンソーで木を伐りまくっているだけではありません。伐採した木を搬出しやすくするために、林道を切り開くことも重要な仕事の一つなのです。これを道づくりと呼びます。

 

 道づくりの重要性についてたとえ話を用いて説明します。もしあなたが、祖父の所有していた山を相続したとします。しかもその山にはたくさんの杉や桧が育っています。その木材を毎日市場に出せばそれなりの収入になるとします。ただ問題は、その山には木を搬出する道がありません。細くて険しい獣道しかない状態です。チェーンソーで木は伐採できてもそれを運び出す手段がなければ意味がありません。これは当たり前と言えば当たり前の話ですが、道づくりは木材を搬出するにはなくてはならない存在なのです。

 この道は山の所有者が元から作ってくれているとは限りませんし、安全で必要最低限の道づくりを行うにはそれなりに専門的な知識と技術が必要になってきます。

 たとえば、下手に道の幅を広げすぎると道が崩落しやすくなります。崩落しにくい最小限のサイズというのは長い経験と科学的な見地からおおよそ決まっています。我々の会社は、先人の知識と経験に頼りながら道づくりをしているのです。それは山に過度な負担をかけずに共存していくということでもあります。

 

 この道づくりが、我々の仕事の半分以上を占めているのです。そして、道づくりをすることによって国から補助金をもらうことができます。国から指定された方式に従って道を作ることで1m〇円という単価で、一つの山に対し数百から数千mほど切り開きます。

 

 この記事では、つい昨日私が実際に行った道づくりの具体的な内容について話していきます。道づくりと一口に言っても様々な工程がありますが、今回行ったのはその中の「裏積工(うらづみこう)」という工程です。これが全行程の中のどの辺に位置するのかをざっくりまとめると、

 

①何の道もない山を歩き予定ルートを決める

②予定ルート上にある邪魔な木を伐採する

③重機を用いて、大体の粗い道をつくっていく

④道の谷側(路肩の下の部分)に丸太の木組みを入れる

⑤道の路肩部分に丸太の木組みを入れる

⑥道の山側(道の壁)の部分に丸太の木組みを入れる 裏積工 ⇐ ここ

⑦勾配修正

⑧敷砂利

 

 裏積工の目的は、道の山側表面にある土の移動、崩落を防ぎ、草が表土に生育しやすくすることです。簡単に言えば壁を崩れにくくすることだと言えるでしょう。

 壁のサイズに応じてチェーンソーで丸太を切断して壁側に埋めるようにして置き、それを何段にも積んでいくのです。

 この際丸太は釘で固定するのですが、すべてハンマーによる手打ちです。最初はこの釘がなかなか丸太に入りません。打ち付けている途中でぐにゃっと曲がってしまうのです。曲がってしまえば使い物にならないので、また新しい釘を打ち付けます。ハンマーも重たいのでなかなかの消耗戦です。私は林業の世界に入ってまだ4週間ほどですが、もうすでに数百本の釘を曲げて無駄にしています。

 このように、裏積工はとても地味な肉体労働作業です。これが何日も続くわけですから、体力がつかないわけがありません。ハンマーのおかげで手はマメだらけです。手の平も、こころなしかゴツくなったように思います。

 

終わりに

 

 さて、道づくりをすることで、木の搬出ができるようになりますし国から補助金ももらえるので、そういう意味ではこの仕事の意義は大きいのですが、他方で、この仕事によって具体的に誰かの人生に貢献している、といった社会的な実感がすごく見えにくいのが現実です。

 ですが、道づくりによって木の搬出や山の手入れもしやすくなり、まさに山と人との共生を可能にしているわけなので、これからもやめるわけにはいきません。

 

 今は一日も早く先人の技術と知識を継承して、山で働く術を身に付けていきたいです。

 

ありがとうございました。

 

さてこの辺で。